同じハワイ旅行が、10万円から15万円に
ハワイ旅行で、ホテルや食事など現地で払うお金が、全部で1,000ドルだとします。
1ドルが100円なら、1,000ドルは10万円です。では、1ドルが150円だったら? 1,000ドルは15万円になります。
旅行の中身は、まったく同じです。変わったのは、1ドルを手に入れるのに必要な円の量だけ。それだけで、5万円もよけいにかかります。
図解でしくみを見る
「1ドル=150円」は、ドルの値札
「1ドル=150円」を、1ドル札についた値札だと考えてみましょう。
1ドルの値札が100円から150円に上がったら、ドルが高くなったということじゃ。そのぶん円の値打ちは下がった。だから数字が大きくなるのが「円安」なんじゃよ。
円とドルのように、ちがうお金を交換するときの比率を**「為替(かわせ)レート」**といいます。
1ドルを手に入れるのに必要な円がふえることを**「円安」、へることを「円高」**といいます。1万円で考えると、わかりやすくなります。1ドル100円なら100ドルと交換できますが、125円なら80ドルにしかなりません。同じ1万円で手に入るドルがへるのが、円安です。
円安で、高くなるもの・有利になるもの
円安は、だれにとっても同じではありません。外国とどう関わるかで、困る人と助かる人に分かれます。
日本は、ガソリンのもとになる原油のほぼすべてを、外国から買っています。食べものも、カロリーで見ると半分以上が外国産です。外国では同じ値段でも、円安だと円で払う額がふえます。その分が、スーパーやガソリンスタンドの値段に上乗せされていきます。
日本銀行は、輸入品が暮らしに占める割合が高まり、円安が物価に響きやすくなっていると分析しています。物価が上がるしくみは、「インフレ・デフレ」の記事でくわしく図解しています。
一方で、外国にモノを売る会社は、同じ1ドルで売っても受け取る円がふえます。日本に来る旅行者にとっては、日本の買い物が安く感じられます。
円は、ずっと動いてきた
円とドルのレートは、これまでどう動いてきたのでしょうか。
1949年、日本は1ドル=360円とレートを決めました。1973年からは、レートが毎日変わる**「変動相場制」**になっています。
その後は円高が進み、2011・2012年は年平均で1ドル約80円でした。そこから円安に向かい、2024年は年平均で約152円です。
2012年に8万円で買えた1,000ドルの旅行が、2024年には15万円ほどかかる計算じゃ。旅行の中身は同じなのに、じゃよ。
レートは、だれかが決めているわけではありません。「円がほしい人」と「ドルがほしい人」の、売り買いのバランスで決まります。たとえば、アメリカの金利が日本より高いと、ドルで預けたい人がふえて、ドルが買われやすくなります。
ゴエン博士のたとえ話
ドルを、お店で売っている商品だと思ってみるんじゃ。1ドルという商品の値札が、100円から150円に上がった。商品が値上がりしたんじゃから、同じお金で買える量はへる。円の値打ちが下がった、というわけじゃな。
お店の値札とちがって、為替レートは毎日、刻々と変わります。値段を決める店主もいません。世界中の「円がほしい人」と「ドルがほしい人」の売り買いで、自然に決まります。
よくある誤解
逆で、円安です。1ドルを手に入れるのに、50円多く出さないといけなくなりました。ドルが高くなり、円の値打ちが下がったということです。
外国にモノを売る会社や、日本に来る旅行者には追い風です。困るのは、燃料や食料など輸入品をたくさん買う人や会社です。同じ円安でも、立場によって受け止め方は逆になります。
外国の動きにも大きく左右されます。日本銀行の研究者の分析では、2021年1月から2023年9月までの円安の多くが、アメリカの金利の上昇で説明できるとされています。
外国に売る会社のもうけや、海外からの収入がふえる。日本に来る旅行者の買い物もふえる。日本銀行の分析でも、円安は全体として景気を押し上げるという結果が出ている。
燃料や食料が値上がりし、家計が買える量がへる。輸入品の割合がふえて、物価にも響きやすくなっている。もうかる会社と苦しくなる会社の差も大きい。
日本銀行は、円高でも円安でも、急に大きく動くこと自体が企業にとって悪い影響になりうる、とも指摘しています。
自分の数字で試す
ドルでの値段と、1ドルが何円かを選んでください。円でいくら払うかを、1ドル=100円のときと自動で比べます。
- 1ドル=100円のとき100ドル
- 1ドル=160円のとき約63ドル
両替の手数料はふくみません。実際のレートは毎日変わります。1万円が少ないドルで払えるほど、外国の旅行者には日本の買い物が安く感じられます。
で、自分はどうする?
- 「1ドル=○円」は、ドルの値札として読む 数字が大きいほど円安で、海外のモノは高くなります。ニュースで数字を見たら、「ドルの値札が上がった?下がった?」と考えてみましょう。
- 海外旅行や通販は「ドルの値段 × レート」で見積もる レートが少し動くだけで、円で払う額は大きく変わります。カードや両替には、手数料が別にかかることも確かめましょう。
- 値上げのニュースを、為替とつなげて読む 燃料や食料の値上げのニュースでは、円安が理由の1つになっていないか見てみましょう。暮らしの値段と世界のつながりが見えてきます。