1万円で買えるおにぎりが、66個から54個に
コンビニのおにぎりが、1個150円だとします。1万円あれば、66個買えます。
では、おにぎりの値段が毎年2%ずつ上がったら、どうなるでしょう。10年後には、1個およそ183円。同じ1万円で買えるのは、54個です。
1万円札は、10年たっても1万円札のままです。でも、買えるおにぎりは12個へりました。変わったのは、お金の「数字」ではなく、お金で「買える量」です。
図解でしくみを見る
お金の数字は同じ。へったのは「買える量」
貯金の数字は1円もへっておらん。でも、その貯金で買えるものはへっていく。これが、物価が上がるということじゃ。
いろいろなモノやサービスの値段が、全体として上がり続けることを**「インフレ(インフレーション)」**といいます。値段が上がると、同じお金で買える量がへります。つまりインフレは、お金の価値が下がることでもあります。
反対に、値段が全体として下がり続けることを**「デフレ(デフレーション)」**といいます。デフレのときは、同じお金で買える量がふえます。
値段の変化は、消費者物価指数という数字で表されます。わたしたちが買うモノやサービスの値段が、平均してどれだけ変わったかを、総務省が毎月まとめている数字です。
値段が上がる、2つの入り口
では、なぜ値段は上がるのでしょうか。入り口は、大きく分けて2つあります。
1つめは、買いたい人が増えること。給料が上がって、多くの人がたくさん買うようになると、お店は値上げしても売れるようになります。
2つめは、作るコストが上がること。燃料や原材料、働く人の給料が上がると、お店や会社は、その分を値段に上乗せします。
2022年からの日本の値上がりは、2つめがきっかけでした。世界で燃料などの値段が上がり、円安も重なって、輸入するものが高くなりました。その後は、給料が上がり、それを値段に上乗せする動きも広がっていると、政府の白書は分析しています。
円安で値段が上がるしくみは、「円高・円安」の記事でくわしく図解します。
日本は長いあいだ、デフレだった
日本の物価は、実際にどう動いてきたのでしょうか。1990年から2025年までの、1年ごとの物価の上がり方を見てみましょう。
1999年から2012年までの14年間で、物価が前の年より上がったのは、たった2年だけじゃ。
1999年ごろから、日本では物価が少しずつ下がる年が続きました。政府は2001年3月、日本経済が「デフレ」の状態にあると、はじめて公式に認めました。その後も、物価がほとんど上がらない時期が長く続きます。
ようすが変わったのは2022年です。物価は2.5%上がり、2025年まで4年続けて2%を超えました。
それでも政府は、2026年7月の時点で、「明らかにデフレの状況にはない」としつつ、「デフレ脱却」はまだ宣言していません。「デフレに戻らない」と言い切れるかを、慎重に見ているためです。
なお、1997年と2014年に物価が大きく上がっているのは、消費税率が上がった年だからです。税込みの値段が、まとめて上がりました。
ゴエン博士のたとえ話
1万円札は「おにぎり交換券」みたいなものじゃ。インフレのときは、1枚で交換できるおにぎりの数が、少しずつへっていく。デフレのときは、その反対じゃな。
実際には、すべての値段が同じだけ上がるわけではありません。食べものが大きく上がる年もあれば、家電やスマホのように下がるものもあります。また、物価と一緒に給料が上がることもあります。
よくある誤解
ゆるやかなインフレは、むしろ目標にされています。日本銀行は2013年から、物価が毎年2%ずつ上がることを目標にしています。値段が少しずつ上がり、給料も上がっていく状態のほうが、経済がうまく回りやすいと考えられているからです。問題になるのは、急に上がりすぎるときや、給料が追いつかないときです。
物価の上がり方とくらべる必要があります。給料が3%上がっても、物価が4%上がれば、買えるものは約1%へります。給料を物価で割り、買える量で見た給料を**「実質賃金」**といいます。ニュースの「実質賃金がマイナス」は、給料の上がり方が物価に追いついていない、という意味です。
値段が下がると、会社の売上がへり、給料も上がりにくくなります。「もっと安くなるまで待とう」と買い物が先送りされ、さらに値段が下がる悪循環にもなりやすいのです。借金は、物価が下がるほど実質的に重くなります。
0%ではなく2%を目指すのは、なぜ?
日本銀行は、理由をおもに2つ挙げています。1つは、物価の統計は、実際より少し高めに出やすいこと。0%を目指すと、本当はデフレのままになるおそれがあります。もう1つは、景気が悪くなったときに、金利を下げる余地を残しておくためです。アメリカやユーロ圏なども、2%程度を目安にしています。
デフレに戻らないためには、物価と給料がそろって少しずつ上がる状態を続けることが大切。そのための目安として、2%は必要だ。
物価が上がっても、給料が追いつかなければ暮らしは苦しくなる。2%を目指して長く続けた大規模な金融緩和には、副作用もあった。
日本銀行も2024年12月、これまでの金融緩和の効果と副作用の両方を点検した結果を公表しています。
自分の数字で試す
貯金の額、物価が上がる割合、何年後かを選んでください。そのお金で、今の何円分の買い物ができるかがわかります。
- 毎年1%約82万円分
- 毎年2%約67万円分
- 毎年3%約55万円分
物価が毎年同じ割合で上がると仮定した目安です。預金の利息や、給料の変化はふくみません。将来の物価を予想するものではありません。
で、自分はどうする?
- 自分のお金を「数字」と「買えるもの」の2つで見る 貯金の額だけでなく、そのお金で何が買えるかも考えてみましょう。物価が上がると、同じ額でも買えるものはへります。
- 給料や預金の利息は、物価の上がり方とくらべる 給料が2%上がっても、物価が3%上がれば、買えるものはへります。ニュースの給料の話は「実質」で見ましょう。
- お金の置き場所を考えるきっかけにする 預金は、数字がへらない安心があります。一方で、利息が物価の上がり方より小さいと、買えるものは少しずつへります。投資は物価より大きく増えることもありますが、へることもあります。まず生活費や急な出費の分を預金で確保してから、考えましょう。